パラレル北陸線#0 まえがき・現状について少し

まえがき・現状の状況考察

タイトルの通りとしか言いようがないが、今回からのシリーズでは前回ちらっと見せた北陸線(架空)ダイヤを作成した世界の世界観などについて解説していく。
しかし、#0 ではその解説に移る前に現実世界での話を軽くしておこうと思う。
まず、現在の北陸地方の広域鉄道路線網は上記の図になっている。
この図に、3月16日に延伸する北陸新幹線と廃止され第三セクターに移管される北陸線の変化が加わることになる。
移管される区間はJRではなくなるので、18きっぷなどを使って(学生から見たら)簡単に旅行に行けなくなったり、運賃が上がって地元の負担が増えるなど、どうしても私からはデメリットがどうしてもすぐに浮かんできてしまう。
そういえば、「北陸新幹線の開業、北陸線第三セクター化することによるメリットはあるのだろうか?」と思ったので、 ここで、北陸新幹線の開業、北陸線第三セクター化のメリット・デメリットについて考えてみることにした。
メリットとしては、

  • 首都圏からの福井県へのアクセス性が向上する
  • 北陸線は地元(主に自治体)が保有することになるため、簡単には廃止にならない
  • JRは黒字の新幹線に集中でき、赤字となる北陸線を切り離せるので、他の赤字路線を支えられるようになったり、サービス向上につなげることができるようになる
  • 北陸線では今まで特急主体だったダイヤを普通列車主体に変えることができるため、地域輸送サービス向上につなげることができるようになる
  • 新幹線が実キロでの運賃計算となり、安くなることがある

といった感じだろうか。
逆にデメリットとしては、

  • JRという全国ネットワークから外れることになるため、運賃体系が分断される
  • (上記にも関連するが)運賃が値上がりする
  • 企画乗車券の取り扱いが厄介になる
  • 敦賀で乗り換えをしなくてはならず、関西・中京圏から福井県へ行く場合の時短効果がほぼなくなる

くらいだろうか。

こうやって整理してみると、どうやら新幹線にも一長一短あって、手放しで喜べる話ではなさそうだ。
特に、今まで「サンダーバード・しらさぎ」で一本で金沢(2015年までは富山)まで行けた関西・中京圏の人々にとってはたまったものではないだろう。
そのような意味では、北陸線幹線の新大阪方面は一刻も早い完成が迫られるところだ。(中京圏方面も...)
(逆に北陸4県に新幹線で一本で行けるので、首都圏の人は大歓喜だろうし、北陸の人たちがますます首都圏の方を向くことにはなりそうだが)
(料金面に関しては、(関西圏では)新幹線開業後も14日前までに事前予約をすれば値上げ幅は在来線と比較して200円程度に抑えられる見込みである。)

また、デメリットにあげた企画乗車券の扱いについては、(日本人にとって)知名度の高い 18きっぷがよく話題に上がるものの、日本の観光業にとって重要な役割を果たす外国人が使用できる JAPAN RAIL PASS についても使用できなくなるなど、インバウンド需要にとっても(新幹線で主要な観光地がある駅はカバーできているとはいえ)マイナスポイントがあるということを忘れてはいけない。
特に、新幹線駅が開業しない特急停車駅の 鯖江・武生あたりでは、(福井駅から)追加料金がかかったりするほか、外国人を含めた観光客を得るのが今以上に厳しくなるのではないだろうか。(越前たけふ駅は越前市の市街地や鯖江市から相当離れているので...)
ただ、北陸の第三セクター各社はそれを克服しようと、格安な2dayフリーきっぷを発売するようなので、それによる損失は少なく抑えられるかもしれない。 (現在発売されている tabiwaパスと同じ発売形式になるのも継続性の観点からポイントが高いので、今度機会があれば使おうと思う)
(追記:JR西日本のtabiwaパスも継続するようで、18きっぷは使えなくなりますが、それでも比較的フリーきっぷ充実しそうで嬉しい限り。)

では、これらのメリット・デメリットを踏まえて もし「並行在来線が分離されなかった世界」があったらこのあたりはどうなっていただろうか?
仮に、はじめから北陸新幹線は並行在来線分離なしとJR西日本が決めた場合、私は本数の減少などがあったりしたり、他の北陸地方のローカル線について存廃議論がもっと早く・深刻な問題になっていたのではないかと考える。
事実、(一部区間で)利用者が少ない山陰線などでは長期運休区間が発生していたり、JR九州管内ではあるが西九州新幹線による並行在来線問題で佐賀県と揉めていたり、肥薩線ではJR九州が、自治体との上下分離方式でさえ一時は慎重な姿勢を見せるなど、大きく時間のかかる面倒な問題が起きている。
このような事象が北陸でも、大糸線や九頭竜線などを中心に起きていたのではないかと想像がつくので、あまり良い選択肢とは言えないのだろう。
そう考えると、第三セクター化は課題はあれど(そもそも新幹線を作らないという選択肢や、もっと突飛な選択肢があったかもしれないが)及第点といえる選択だったのではないだろうか。
ただ、整備新幹線の並行在来線の中には「肥薩おれんじ鉄道」のように大苦戦している会社も存在している。北陸線がそうなるとはあまり考えにくいが、第三セクター各社が合理的かつ利用者目線の鉄道運営をして、長くそして地域に愛される鉄道会社になることを願うばかりである。

->#1 世界観設定(前史) につづく